愛と結婚 イギリス小説の場合
神山 妙子 編
- 四六判・並製・総292頁
- 本体2,000円
- ISBN4-7952-9204-3 C3097
何等かの形で愛が語られていない小説は稀であるのみならず、その多くのものが愛を中心課題としていることは周知の事実である。イギリス小説の場合もその例に洩れない。本書に収録された十八世紀から現代に至る代表的な作家の作品において、愛は様々な角度から取りあげられている。
【主要目次】
- 第1章 『パミラ』…………………………………サミュエル・リチャードソン
- パミラの牢獄
- 第2章 『トム・ジョウンズ』……………………ヘンリィ・フィールディング
- 見せかけ社会への反撃
- 第3章 『説得』………………………………………ジェイン・オースティン
- 変わるものと変わらないもの
- 第4章 『デイヴィッド・コパフィールド』…………チャールズ・ディケンズ
- 溺愛の社会学
- 第5章 『ジェイン・エア』……………………………シャーロット・ブロンテ
- 情熱の解放と抑制
- 第6章 『ダニエル・デロンダ』………………………ジョージ・エリオット
- 女性とめざめ
- 第7章 『日陰者ジュード』……………………………トマス・ハーディ
- 見果てぬ夢、そして愛
- 第8章 『ダブリンの人びと』…………………………ジェイムズ・ジョイス
- 愛の不毛と挫折
- 第9章 『船出』…………………………………………ヴァージニア・ウルフ
- 恋と自己の確立
- 第10章 『虹』……………………………………………D・H・ロレンス
- 愛を、さもなくば……
- 第11章 「子供らしいがとても自然に」その他…キャサリン・マンスフィールド
- 幻影と孤独
- 第12章 『情事の終り』…………………………………グレアム・グリーン
- エロスからアガペーへ
- 第13章 『切られた首』…………………………………アイリス・マードック
- 原点への回帰
【書評】
評者:五代 徹 (「第三文明 1990年4月号」より)
この本は、どうやら若い女性、特に女子大生などを読者対象にしてつくられた本のようである。十八世紀の作家サミュエル・リチャードソンから始まって、ジェイン・オースティン、シャーロット・ブロンテ、ジェイムズ・ジョイス、D・H・ロレンス、そして、新しいところでは、グレアム・グリーン、アイリス・マードックまでの十三人のイギリスの作家たち(女流作家が六人、男性作家が七人)を俎上に載せている。
すべて、「愛と結婚」というテーマで、微妙な男女の心の襞に迫っている。 時代が異なることで、作家の雰囲気も登場人物の雰囲気も、がらりと変わる。同時代の人であれば大概、想像がついてしまう。若い女性が自分と違ったタイプの異性を真剣に考えるということになると、やはり時代も異なった、ひょっとしたら理解できないのではないかと思われるような時代の人に会うのがいい経験になる。また見も知らぬ異性とのことについて考えるには、こうした読み物がお勧めである。