玉蟲左太夫研究序説
——「航米日録」巻一における沈黙と忍耐——
髙槗茂美
- 四六判・並製・総198頁
- 本体1,800円
- ISBN978-4-434-21742-5 C1095
咸臨丸に乗った勝麟太郎と福沢諭吉が近代日本を牽引した言わば英雄であるとするならば、彼らの栄光とは違った角度から輝きを放つ、日本の近代化を成し遂げようとした英雄もまた多く存在する。その一人がポーハタン号に乗った遣米使節の随臣の一人で帰国後『航米日録』を著した、玉蟲左太夫(たまむし・さだゆう)である。
本書は、玉蟲の人生を辿りつつ、『航米日録』の執筆の周辺を考察する。
(序論より)
【目次】
- 序論
- 一 「実行者」としての玉蟲
- 二 内面化された〈有志者〉=「実行者」
- 三 〈有志者〉=「実行者」という武士の形成
- 第一章 『航米日録』に見る玉蟲の視線とその記述
- 一 『航米日録』における完全な記述への志向とその破綻が齎す「記述の空白」
- 二 玉蟲が米国へ向かう意味とその覚悟を通して顕在化する客観的な視線
- 三 米国海軍の規則・文化・軍隊への傾斜
- 四 玉蟲における異文化と〈苦難〉――武士が書くということ
- 第二章 編集された『航米日録』
- 一 記述することの限界と作品内に流れる時間の矛盾
- 二 〈従者〉としての玉蟲が見た〈ホーハタン〉内で働く米国人の〈規則〉
- 三 米国人の秩序・規則と玉蟲
- 第三章 学問へと志向する『航米日録』
- 一 客観的な記述によって内面化する学問世界
- 二 「新しい学問」としての『航米日録』
- 第四章 闘う武士の沈黙と忍耐
- 一 〈暴風雨〉という〈苦難〉を記す武士のアイデンティティ
- 二 〈病人〉としての武士・軍事的側面を担う武士の顕在化
- 三 玉蟲の〈厄路〉・〈天運〉・〈幸〉
- 注釈
- 『航米日録』巻一の構造
- あとがき