遠藤周作――その文学世界
山形 和美 編
- 選書3
- 四六判・上製・総436頁
- 本体2,800円
- ISBN4-7952-9215-9 C0395
【主要目次】
- 序章――遠藤周作の文学……………………山形和美
- 「アデンまで」『黄色い人・白い人』………………宮坂 覺
- 『青い小さな葡萄』と「月光のドミナ」……………神田重幸
- ――<悪>と<神>のはざまで
- 『海と毒薬』――日本人的な感覚の追究……………………………笠井秋生
- 「最後の殉教者」「雲仙」……………………………………………宮坂 覺
- 『おバカさん』――<自分のキリスト>をめぐって………………………川島秀一
- 『わたしが・棄てた・女』………………………………………………佐古純一郎
- 『留学』――意識と無意識の世界…………………………………マーク・ウィリアムズ
- 『沈黙』――終わりから始まる小説…………………………………山形和美
- 「母なるもの」――菊市さんのオラショ…………………………………遠藤 祐
- 『死海のほとり』――イエスに向けてのキリストの非神話化……………山形和美
- 『侍』――『沈黙』以後の軌跡を軸として……………………………佐藤泰正
- 『女の一生』――そのテーマ構造……………………………………小野功生
- 『宿敵』『反逆』そしてその後――転生のモチーフと悪の問題…斎藤和明
- 『スキャンダル』…………………………………………………………西谷博之
- 『深い河』――その物語構造…………………………………………遠藤 祐
- 『黄金の国』『薔薇の館』――日本における<ドラマ>の創造…………高堂 要
- 『イエスの生涯』と『キリストの誕生』……………………………………高柳俊一
- ――再臨せざるキリストと芸術的創造
- 『カトリック作家の問題』『宗教と文学』『石の声』その他………………高柳俊一
- ――遠藤周作の評論とキリスト教文学論
- あとがき…………………………………………………………………山形和美
- 遠藤周作年譜
- 遠藤周作参考文献一覧
- 索引
【書評】
評者:富岡 幸一郎 (平成10年7月1日付「夕刊フジ」より)
キリスト教との出会いということでは、やはり遠藤周作の名前を忘れるわけにはいかないだろう。山形和美編『遠藤周作――その文学世界』(国研出版)は、日本という風土の中で、カトリックの信仰を通して、その文学をつくりあげた遠藤周作の全体像をあきらかにしている。作家の評価は、生前よりも、その死後に遺された作品がどう読まれるかによって決まる。この本は、遠藤文学の初期から最後の『深い河』までの各作品を、多彩に総括的に論じている。
【書評】
(「信徒の友 1998年3月号」より)
遠藤周作の代表的な作品二十数編を、キリスト教文学会に属する評論家たち十数人が論じた。「白い人」で芥川賞をとってから最後の長編「深い河」を書くまで、約五〇年間、遠藤は、キリスト者として、この聖なるものに鈍感な日本という風土のなかで、イエス・キリストという神にして人なる存在のリアリティーを、日本語という不自由な言語で表現しようとたたかいつづけた。その苦しいたたかいのあとを温かい目で辿った論集、入門書。