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遠藤周作――その文学世界

山形 和美 編

【主要目次】

【書評】

評者:富岡 幸一郎 (平成10年7月1日付「夕刊フジ」より)

キリスト教との出会いということでは、やはり遠藤周作の名前を忘れるわけにはいかないだろう。山形和美編『遠藤周作――その文学世界』(国研出版)は、日本という風土の中で、カトリックの信仰を通して、その文学をつくりあげた遠藤周作の全体像をあきらかにしている。作家の評価は、生前よりも、その死後に遺された作品がどう読まれるかによって決まる。この本は、遠藤文学の初期から最後の『深い河』までの各作品を、多彩に総括的に論じている。

【書評】

(「信徒の友 1998年3月号」より)

遠藤周作の代表的な作品二十数編を、キリスト教文学会に属する評論家たち十数人が論じた。「白い人」で芥川賞をとってから最後の長編「深い河」を書くまで、約五〇年間、遠藤は、キリスト者として、この聖なるものに鈍感な日本という風土のなかで、イエス・キリストという神にして人なる存在のリアリティーを、日本語という不自由な言語で表現しようとたたかいつづけた。その苦しいたたかいのあとを温かい目で辿った論集、入門書。