42 平安貴族の住居はどんなものであったか

『源氏物語の謎』増淵勝一 著 - 国研ウェブ文庫

平安貴族の典型的な住居は寝殿造りです。寝殿を中心に東西北の対屋(たいのや)・泉殿・釣殿(つりどの)等があり、寝殿と対屋以下とは渡殿(わたどの)(廊)で結ばれています。

東西両対屋と池に突き出る釣殿及び泉殿とは回廊で結ばれ、その回廊の中心部に中門があります。中門付近に車宿(くるまやど)り(車庫)があり、西の対の後方には雑舎(使用人の住居・年貢や特産品などを入れる建物など)が置かれました。

これらの外側にはさらに築地(土塀)が築かれ、その東西南北の各中心に総門が設けられました。

ふつう左右対称的に整然と築造されることが多いが、実際には地画や泉(池)の位置などで、必ずしも左右対称とは限りません。

寝殿造の特色は、各々の建物を廊(渡殿)でつないでいること、中門廊のあること、寝殿の正面に池を伴った庭を造り、遣り水(やりみず)(小川)を引き入れること、などがあげられます。

公卿など上流階級の住宅の敷地は一町四方(約四千五百坪)がふつうですが、光源氏の六条院のように二町四方の大邸宅もあり、その立地条件や邸主の地位、貧富の差などにより規模はさまざまでした。

寝殿は、寝る所の意ではなく、主人の居間、客人応接の間のことです。その構造は五間四面・七間四面などいくつかあります。全て板敷きで、中央の母屋、その外側に廂(ひさし)・さらに孫廂のある場合もあり、おもてに面して簀子(すのこ)があります。

簀子には高欄(こうらん)(手すり)をめぐらし、柱の間に格子(こうし)、四隅に妻戸(つまど)があります。屋根は桧皮葺(ひわだぶ)き。南に向き中央に五段の階段があります。庭に掘った池には中島を築き、遣り水を流し、前栽(せんざい)を植えました。

十円玉の裏には平等院の寝殿と東西の対屋が彫られています。また宇治上神社の本殿は寝殿造りの遺構として有名です。なお、お寺の構造に寝殿造りの面影が残るものも少なくありません。

作成日:2013年12月20日

『源氏物語の謎』増淵勝一 著 目次

  1. 『源氏物語』はいつ書かれたか
  2. 『源氏物語』はどんな物語か
  3. 『源氏物語』の巻名はだれがつけたものか
  4. 『源氏物語』の時代設定はいつか
  5. 光源氏に愛された女性の中で、一番しあわせだったのはだれか
  6. 『源氏物語』の伝本にはどんなものがあるか
  7. 『源氏物語』の三大滑稽人物とはだれか?
  8. 『源氏物語』という書名ははじめから付けられていたものか?
  9. 『源氏物語』の「もののあはれ」とは何か?
  10. 紫式部の名の由来は?
  11. 光源氏はなぜ義母の藤壺を思慕したのか。
  12. 「桐壺」とは何か
  13. 「雨夜の品定め」とは何か
  14. 「帚木」とは何か
  15. 『源氏物語』の三箇(さんか)の大事(だいじ)とは何か
  16. 紫式部堕獄(だごく)説とは何か
  17. 『源氏物語』は古人にどう評価されたか。
  18. 紫式部はどういう生涯を送ったか
  19. 登場人物の名づけ親は誰か
  20. 源氏物語の文章の「すべらかし」調とは?
  21. 光源氏の「二条院」はどこにあったか
  22. 源氏物語に描かれた結婚形態とは
  23. 「紅葉賀(もみじのが)」とは何か
  24. 源氏物語に近親結婚が多いのはなぜか
  25. 結婚を拒否する女性
  26. 光源氏はどんな容貌・容姿であったか
  27. 源氏物語の遺跡にはどんなものがあるか
  28. 源氏物語の構成はどうなっているか
  29. 乳母(めのと)とは何か
  30. 源氏物語には何首の和歌があるか。
  31. 「総角」巻の巻名の由来は何か。
  32. 光源氏はなぜ須磨に籠居したのか。
  33. 「夢浮橋」の巻名の由来は何か
  34. 光源氏の経済的基盤はどこにあったか(1)
  35. 弘徽殿の大后のモデルは誰か
  36. 桐壺の更衣のモデルは誰か
  37. 紫式部観音化身説とは?
  38. 光源氏の経済的基盤はどこにあったか(2)
  39. 源氏物語』の登場人物は何人ぐらいいるか?
  40. 『源氏物語』に登場する敵役(かたきやく)
  41. 主な女君たちの命日
  42. 平安貴族の住居はどんなものであったか
  43. 宇治の八の宮は二人の姫君を残してなぜ出家を目指すことができたか
  44. 源氏物語が長い間読まれつづけているのはなぜか
  45. 『源氏物語』の最も古い注釈書とは
  46. 「かがやく日の宮」巻とは何か
  47. 「澪標」の巻名の由来は?
  48. 『源氏物語』に描かれた病気
  49. 紫式部の教養
  50. 古注の集大成―『河海抄』
  51. 世界文学史上の『源氏物語』
  52. 紫式部の学問観
  53. 光源氏薨後の夫人たちの生活は?
  54. 物怪(もののけ)とは何か
  55. 「宿木(やどりぎ)」とは?
  56. 女君たちの魅力は?
  57. 六条院とはどんな邸宅であったか
  58. 女三の宮と柏木との関係を知った光源氏はどう対処したか?
  59. 紫式部の住居はどこにあったか?
  60. 作り物語の『源氏物語』に実在の人物が登場するのはなぜか?
  61. 紫式部と藤原道長の関係について
  62. 源氏物語に及ぼした伊勢物語の影響
  63. 「鈴虫」の巻名の由来は?
  64. 「侍従」という女房の役割は何か
  65. 光源氏が一番美人だと認めていた女君は誰か
  66. 紫式部の墓はどこにあるか
  67. 「雲隠」の巻は原作にあったのか
  68. 男君たちの魅力は
  69. 源氏物語に見える音楽
  70. 年立ての矛盾
  71. 各巻のあらすじ(1)桐壺・帚木
  72. 女君を選ぶとしたら?
  73. 各巻のあらすじ(2)空蝉・夕顔
  74. 『源氏物語』の続編(1)―『山路の露』―
  75. 各巻のあらすじ(3)若紫・末摘花
  76. 『源氏物語奥入(おくいり)』とは
  77. 源氏香とは何か
  78. 平安時代の風呂はどんなものであったか
  79. 牛車(ぎっしゃ)とは何か
  80. 貴族の日常生活はどういうものであったか
  81. 源氏物語にはなぜ大災害が描かれていないのか
  82. 源氏物語にあらわれた宿世観
  83. 源氏物語に登場する僧侶
  84. 『源氏物語』の主役の条件

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