56 女君たちの魅力は?
『源氏物語の謎』増淵勝一 著 - 国研ウェブ文庫
『源氏物語』の登場人物はそれぞれ個性的に、魅力的に描かれています。以下は私の担当する「源氏物語講座」の聴講生の皆さんが、女君たちの魅力はここにあると、コメントしてくださったレポートをもとに、私見を加えてまとめてみたものです。
- 明石の御方 自分の立場(出自・身分など)を客観的に見る賢さがある。源氏への思いや、わが子の出世・一家の繁栄のために自己を抑制、謙虚に生きた。
- 朝顔 源氏の求愛を浮薄なものと否定。独身でとおした気高さ。
- 浮舟 はじめは薫と匂宮との間で翻弄されたが、入水後助けられてからは、自分の生き方を決めて、強く生きて行く。
- 空蝉 自分の分際(身分・年齢・容姿)を考えて、一度は許したものの、その後の源氏の求愛を拒絶。自分の意思を貫いた。
- 落葉宮 夕霧の求愛をかたくなに拒みつづけたが、周囲の希望もあって結婚、正妻となる。夕霧を引きつける高貴で、優雅な人柄。反面したたかな強さもある。
- 朧月夜 朱雀院に愛されたが、最後まで源氏が好きだった。明るく、大肚。
- 雲井雁 優雅な内大臣の娘であったが、出産後子育てに熱中。一時夕霧の愛を失う。無邪気で、ナイス・バディ。
- 末摘花 ぶ器量で、頑固だが、亡父のいさめを守る。ブレず、誇りが高い。
- 玉鬘 思慮深い。身のほどをわきまえ、源氏の求愛をさけ、髭黒と結婚して、しあわせな家庭を築く。
- 花散里 地味で女性的な魅力は乏しいが、分をわきまえ、子育て上手。人柄もよい。
- 藤壺 源氏との間に冷泉院をもうけるが、その後は冷泉院を守るために、源氏との愛を断った。自制心と判断力があった。
- 紫上 才色兼備でありながら、控えめ。他の女君たちへの心配りもあり、源氏を支え、強く賢く生きた。女三宮の六条院降嫁の際には、動揺を隠して源氏を支援。
- 夕顔 一見か弱く、無邪気だが、それなりの教養もあり、しかもコケティッシュである。
- 六条御息所 教養が深く、自尊心の強い女性の典型。源氏への思いをうまく表せず、嫉妬・嘆き・怨念から物怪になった。屈折した思い、女心のやるせなさなどが読者を引きつける。
以上、代表的な女君の魅力の数々を簡単に述べました。読者の皆さんのご見解もうかがいたいものですね。
作成日:2014年7月31日
『源氏物語の謎』増淵勝一 著 目次
- 『源氏物語』はいつ書かれたか
- 『源氏物語』はどんな物語か
- 『源氏物語』の巻名はだれがつけたものか
- 『源氏物語』の時代設定はいつか
- 光源氏に愛された女性の中で、一番しあわせだったのはだれか
- 『源氏物語』の伝本にはどんなものがあるか
- 『源氏物語』の三大滑稽人物とはだれか?
- 『源氏物語』という書名ははじめから付けられていたものか?
- 『源氏物語』の「もののあはれ」とは何か?
- 紫式部の名の由来は?
- 光源氏はなぜ義母の藤壺を思慕したのか。
- 「桐壺」とは何か
- 「雨夜の品定め」とは何か
- 「帚木」とは何か
- 『源氏物語』の三箇(さんか)の大事(だいじ)とは何か
- 紫式部堕獄(だごく)説とは何か
- 『源氏物語』は古人にどう評価されたか。
- 紫式部はどういう生涯を送ったか
- 登場人物の名づけ親は誰か
- 源氏物語の文章の「すべらかし」調とは?
- 光源氏の「二条院」はどこにあったか
- 源氏物語に描かれた結婚形態とは
- 「紅葉賀(もみじのが)」とは何か
- 源氏物語に近親結婚が多いのはなぜか
- 結婚を拒否する女性
- 光源氏はどんな容貌・容姿であったか
- 源氏物語の遺跡にはどんなものがあるか
- 源氏物語の構成はどうなっているか
- 乳母(めのと)とは何か
- 源氏物語には何首の和歌があるか。
- 「総角」巻の巻名の由来は何か。
- 光源氏はなぜ須磨に籠居したのか。
- 「夢浮橋」の巻名の由来は何か
- 光源氏の経済的基盤はどこにあったか(1)
- 弘徽殿の大后のモデルは誰か
- 桐壺の更衣のモデルは誰か
- 紫式部観音化身説とは?
- 光源氏の経済的基盤はどこにあったか(2)
- 源氏物語』の登場人物は何人ぐらいいるか?
- 『源氏物語』に登場する敵役(かたきやく)
- 主な女君たちの命日
- 平安貴族の住居はどんなものであったか
- 宇治の八の宮は二人の姫君を残してなぜ出家を目指すことができたか
- 源氏物語が長い間読まれつづけているのはなぜか
- 『源氏物語』の最も古い注釈書とは
- 「かがやく日の宮」巻とは何か
- 「澪標」の巻名の由来は?
- 『源氏物語』に描かれた病気
- 紫式部の教養
- 古注の集大成―『河海抄』
- 世界文学史上の『源氏物語』
- 紫式部の学問観
- 光源氏薨後の夫人たちの生活は?
- 物怪(もののけ)とは何か
- 「宿木(やどりぎ)」とは?
- 女君たちの魅力は?
- 六条院とはどんな邸宅であったか
- 女三の宮と柏木との関係を知った光源氏はどう対処したか?
- 紫式部の住居はどこにあったか?
- 作り物語の『源氏物語』に実在の人物が登場するのはなぜか?
- 紫式部と藤原道長の関係について
- 源氏物語に及ぼした伊勢物語の影響
- 「鈴虫」の巻名の由来は?
- 「侍従」という女房の役割は何か
- 光源氏が一番美人だと認めていた女君は誰か
- 紫式部の墓はどこにあるか
- 「雲隠」の巻は原作にあったのか
- 男君たちの魅力は
- 源氏物語に見える音楽
- 年立ての矛盾
- 各巻のあらすじ(1)桐壺・帚木
- 女君を選ぶとしたら?
- 各巻のあらすじ(2)空蝉・夕顔
- 『源氏物語』の続編(1)―『山路の露』―
- 各巻のあらすじ(3)若紫・末摘花
- 『源氏物語奥入(おくいり)』とは
- 源氏香とは何か
- 平安時代の風呂はどんなものであったか
- 牛車(ぎっしゃ)とは何か
- 貴族の日常生活はどういうものであったか
- 源氏物語にはなぜ大災害が描かれていないのか
- 源氏物語にあらわれた宿世観
- 源氏物語に登場する僧侶
- 『源氏物語』の主役の条件
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